Fuma Kashiwagura
柏倉 風馬
私が描くのは、不調や障害を通した身体とその身体性だ。それは「不自由さ」と言い換えることができるかもしれない。身体には自由と不自由という相反する性質が同居しており、私たちはその狭間で日々を営んでいる。その不自由さこそが、人間の思考や行動に深く根ざしているように感じられる。
2017年頃から制作を始めた《NOT BODY YET》シリーズは、自分自身ではコントロールできない身体をテーマに据えた。「NOT BODY YET」とは、「まだ身体ではない」という意味である。例えば、こう動きたい、こうありたいと願ったとしても、身体はしばしば思うようにはならない。そんな時、自分の身体になりきれていない何かが、体の奥にあるような感覚を覚えるのだ。このシリーズでは、そのような「自分と身体の距離」を描き出そうと試みた。
2024年から手掛けているFlawless Torsoシリーズでは、トルソーをモチーフに制作を行っている。トルソーとは、手足や頭のない胴体の像のことだ。その姿には、欠けているがゆえの美しさと、人間が本来持つ不完全さが同時に宿っているように思える。無意識のうちに私たちの身体は完璧さと対比させられ、完璧を目指してしまう。しかしながら、完璧とは幻想に過ぎず、私たちはその幻想に振り回される。「Flawless」とは「完璧」を意味するが、欠落を抱えながらも存在する姿をあえて「完璧」と呼ぶことで、身体への解釈の揺らぎを表したかった。
あらゆる思考や行動は、身体という存在そのものの制限を受ける。そして、それが私たちの世界の在り方を決定づけている。不自由さを意識する瞬間、私たちはその限界と可能性について深く向き合わざるを得ない。思い描いた姿とは異なるかたちで私たちの前に現れる身体。その中に潜む美しさ、空虚さ、生々しさを私は描きたい。
略歴
1992 山形県生まれ
2015 東北芸術工科大学 洋画コース 卒業
第25期佐藤美術館奨学生
第2期神山財団奨学生
2017 東北芸術工科大学 大学院 芸術文化専攻 洋画領域 修了
賞歴
2015 東北芸術工科大学 卒業修了展示 優秀賞
2017 月刊美術 美術新人賞「デビュー」2017 グランプリ受賞
2018 SHIBUYA AWARDS 2018 ART部門 小山登美夫賞 受賞
個展
2017 東北芸術工科大学終了展示
2018 「Hollow Bodies」 フジヰ画廊/東京
2019 「NOT BODY YET」 まなびあテラス/山形
2020 「NOT BODY YET」 ギャラリー58/東京
グループ展
2015 東北芸術工科大学3人展 perché 銀座スルガ台画廊/東京
2016 SQUARE The Double No.10 フリュウ・ギャラリー/東京
東京三菱アートゲートオークション出品作品展示 表参道GYRE 3階 EYE OF GYRE/東京
さすらいの鉛筆・ペン画展 吉田町画廊/神奈川 ゆう画廊/東京
うごめく東北の鼓動 石川胡弓 柏倉風馬 展 ギャラリー58/東京
2017 ときめきフューチャー もみの木画廊
2018 inside/outside フリュウ・ギャラリー/東京
SHIBUYA AWARDS 2018 ART部門入選展
SHIBUYA AWARDS 2018 ART部門 受賞作品巡回展
2022 鴻崎正武退任記念ゼミ展 TOUGEN は何処 ? ゆう画廊
2024 KAMIYAMA ART カドリエンナーレ 上野の森美術館
2025 余白のアートフェア 福島県双葉郡広野町二ツ沼総合公園